最新版の学習指導要領(以下、次期学習指導要領)が2017年3月に公示されました。
「学習指導要領」とは、文部科学省が定めた小学校・中学校・高校の各教育課程における基準のこと。2020年から本格的な実施が予定されており、2018年から移行期間に突入しています。
そこで今回は、次期学習指導要領の基本的な内容とポイント、中学校教育における変更点について解説します。変化する教育カリキュラムに際して生徒や親はどう対応すればよいのか、考えるきっかけになれば幸いです。
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■次期学習指導要領6つのポイント、身につけるべき3つの力とは?
学習指導要領が改訂された背景には、グローバル化の進展やAI技術・IoT(インターネット・オブ・シングス=さまざまな物をインターネットと接続して機能させること)の普及といった社会の要請にともない、未来を担う子どもたちの養うべき能力や資質が、以前とは大きく違うことになるという認識があります。
それゆえ、次期学習指導要領では、子どもたちを取り巻く時代・環境や教育現場の現状などを踏まえたうえで、“学ぶこと”の本質を改めて捉えなおし、今の時代に必要な学びを可能にするための枠組づくりがめざされています。
このような次期学習指導要領の目的を実現するために学校教育で指針となるのが、以下の6項目です。
1.何ができるようになるか…育成を目指す資質・能力
2.何を学ぶか…教科等を学ぶ意義と教科等間・学校段階間のつながりを踏まえた教育課程の編成
3.どのように学ぶか…各教科等の指導計画の作成と実施、学習・指導の改善・充実
4.子ども一人ひとりの発達をどのように支援するか…子どもの発達を踏まえた指導
5.何が身についたか…学習評価の充実
6. 実施するために何が必要か…学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策
※1 中学校学習指導要領解説(総則編)より引用
これら6項目に基づき、すべての教科において子どもたちが①知識及び技能②思考力・判断力・表現力等③学びに向かう力、人間性等(※2)を身につけられるよう、教育カリキュラムが予定されています。
※2 中学校学習指導要領解説(総則編)より引用
次期学習指導要領とは、平たくいえば学校教育のあり方を示すもの。ですから、その方針が変更されるということは、つまりは授業内容にも変化がもたらされることを意味します。それでは、次期学習指導要領下での授業では、具体的には何がどのように変わるのでしょうか。
■中学校教育では具体的に何が変わるの?
2020年以降の中学校授業では、“知識や学力をつけるための教育”から、“これからの社会で活躍できる資質や能力を養うための教育”へのシフトチェンジがめざされています。
まず、教育方針の主軸となるのが、知識の理解の質を高め、資質・能力を育むための「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」です。
アクティブ・ラーニングの実施に際して、今後の学校教育では、教師が一方的に知識を教える講義スタイルではなく、もっと生徒が能動的に学習に参加できるようディスカッションやプレゼンテーションを取り入れた授業スタイルが求められるようになります。
そして、このような授業を通して、子どもたちには、知識と知識を関連づけてより深く理解する力や課題を見いだして解決策を考える力、未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力を身につけることが期待されています。
このほか、次期学習指導要領のもとでは、情報活用に関する授業の充実がめざされています。中学校では、コンピューターなどの情報手段を適切に用いて情報を収集・整理・比較することや、情報モラル・情報セキュリティに関する知識やプログラミング的思考を育むことなどがカリキュラム化される予定です。
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■変わる中学校教育。大学入試への影響も!生徒・親はどう対応すればいい?
次期学習指導要領の実施にともなうアクティブ・ラーニングの強化は、大学入試にも大きな影響を与えます。2020年度以降は、センター試験は廃止され、代わりに「大学入学共通テスト」や「高等学校基礎学力テスト」を導入。
従来の大学入試に多く見受けられた“どれだけの知識・学力を持っているか”が測られる出題よりも、思考力や判断力・表現力が問われる出題が多くなるといわれています。また、小論文やディベート・プレゼンテーションを試験項目に採用する学校も増える予定です。
このように、次期学習指導要領の実施にともなって、中学校教育はもちろん、その先の大学入試までもが大きく変わろうとしているのです。
とはいえ、知識・学力は重要でなくなるのかといえば、決してそうではありません。むしろ、思考力や判断力・表現力を身につけ、それらを生かすためには、基礎的な知識や学力を育み、定着させることが非常に大切になります。自分の意見を相手に伝えたり、相手の意見を理解したりするためには、知識や学力は必要不可欠です。
つまり、思考力や判断力・表現力と知識や学力は相関関係にあり、双方を同時に伸ばしていくことが重要だといえます。
ですから、「思考力を鍛えよう」「知識を得よう」などとそれぞれを単体で捉えるのではなく、「思考力を鍛えるために知識を得よう」「得た知識と知識を組み合わせて考えてみよう」というようにかけ算式に捉え、基礎学力の向上と、“自分自身で主体的に思考し、判断し、結論を出す”という習慣づけに注力していくことが大切なのではないでしょうか。