富田林中学は、府立初の公立中高一貫校として開校し、今年で6回目の入試となりました。毎年倍率も高く、人気を集める富田林中ですが、2022年の入試「適性検査」の倍率や試験内容はどのようなものだったのでしょうか。
学校概要や基本的な入試方法などについては、以前の記事「大阪府立で初の中高一貫校!大注目&高倍率の大阪府立富田林中学校」に譲り、今回は2022年の最新情報を中心に「適性検査」の内容に話題を絞り込み、実際に富田林中受検を検討しているお子様の参考になる、掘り下げた情報をご紹介していきます。
まずは、2022年の富田林中の適性検査における倍率や概要について見ていきましょう。
倍率は昨年より落ち着いたものの、高倍率
2022年の富田林中の適性検査ですが、例年に比べると倍率はやや下がりました。しかし、他校に比べると高く、富田林中は依然として「人気の高い学校」と言えるでしょう。
具体的には、2022年の適性検査では、定員120名に対し、志願者数330名、「倍率2.75倍」という結果でした。
開校当初は「ダメ元でとりあえず受けてみよう」といういわゆる記念受検、お試し受検層が一定数いたこともあり、倍率が5倍を超えるなど非常に狭き門でした。
しかし、開校してある程度期間が経ったこと、2020年からはコロナ禍で受検校を絞る傾向も強いことから倍率はさらにゆるやかになりました。そして、今年は昨年の3.12倍に比べるとより落ち着いた結果となりました。
公立高校であれば人気がある学校でも倍率1.5倍ほどであることを考えると、富田林中は非常に人気があり、入学が難しいことには変わりありません。 今後も引き続き、「地域の人気校」でありつづけ、一定の高い倍率となることが予想されるでしょう。
倍率の推移
年度 | 志願者数 | 志願倍率 |
---|
2017年 | 603人 | 5.03倍 |
2018年 | 497人 | 4.14倍 |
2019年 | 434人 | 3.62倍 |
2020年 | 425人 | 3.54倍 |
2021年 | 374人 | 3.12倍 |
2022年 | 330人 | 2.75倍 |
私立中学と併願する生徒も
富田林中を受検する生徒の中では、私立中学と併願するケースも見受けられます。
地域でも、富田林中と同じような適性検査型の入試を実施する私立中学校が複数あるため、同様の入試形態の学校を中心に併願受検をする生徒がいます。
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適性検査(入試)の概要
2022年の富田林中の適性検査の概要は、以下となります。
適性検査の概要
試験内容 | 配点(時間) |
---|
適性検査Ⅰ(国語的問題) | 100点(45分) |
適性検査Ⅱ(理科・社会融合的問題) | 100点(45分) |
適性検査Ⅲ(算数的問題) | 100点(45分) |
作文(400字程度) | 60点(30分) |
適性検査の内容は、私立中学校の入試のように小学校の教科書内容を超える事柄は出題されません。ただ、特徴として、長い問題文を読んだうえで、様々な条件を考えて答えを出す・記述をするといった特殊な問題が出題されます。
このような「読解力」「論理的思考力」「表現力」などが必要とされる例年の問題傾向は、2022年適性検査においても継続されていました。
具体的な科目別の内容については、次項目で見ていきましょう。
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富田林中適性検査の出題傾向と対策
2022年に出題された問題の最新情報を中心に、富田林中の適性検査の出題傾向と対策について解説します。
〈適性検査Ⅰ〉国語的問題
適性検査「国語的問題」では、大問が3つ。大問の大まかな内容としては、①論説文的随筆、②会話文を読み解く問題、③説明文となっています。論説文的随筆では、毎年自然科学の内容が多く、2022年も「昆虫」についての随筆でした。
問題の特徴として、文字数の多い記述問題が挙げられます。初年度は記述の制限文字数の総量390文字と非常にボリュームがありました。しかし、2022年は、制限文字数の総量77文字と大きく減り、また、適性検査全体の問題数も減ったため、一問一問の配点が高くなりました。
国語の適性検査で求められる力として、「問題分析能力」「本文読解能力」が挙げられます。問題文の中から何をどこに探せばよいのかを瞬時に判断し、本文の内容もしっかりと理解する必要があるのです。
また、「記述回答作成能力」も大切です。先述の通り2022年はボリュームこそ減りましたが、例年記述問題は出題されています。富田林中の国語の記述問題を解くにあたっては、複数の解答要素の中で必要な部分だけを切り取り、適切につないで解答を作成することが求められるでしょう。
〈適性検査Ⅱ〉理科・社会融合的問題
適性検査Ⅱは、「理科・社会融合的問題」となります。2022年の配点は、理科51点、社会49点という内訳でした。
2022年は、適性検査が始まって以来初めて、本格的な理科と社会の融合問題が出題されました。内容は、等高線から山の断面図を書いたうえで柱状図を見て地層の様子も記載するというもので、問題文や図・表を正しく理解し、理科と社会の知識を生かして考えられるかがポイントとなりました。
理科
2022年の理科は、例年通り、物理・化学・地学・生物の4単元の全てから出題され、配点もほぼ同じでした。理科は小5、小6で学習する分野がまんべんなく出題されるため、特定の単元に偏ることなく、バランスのよい勉強が求められます。
理科の対策として、まず大切なのは「教科書レベルの内容を完璧に習得する」ことです。ただ、単なる語句の暗記ではなく、実験の手順や器具の名称・使い方、実験の目的・理由まできちんと理解しておくことが求められます。たとえば、2022年に実際に出題された問題だと、「顕微鏡の選択(解ぼう顕微鏡・双眼実体顕微鏡の区別)」「こまごめピペットの使い方(使う時の注意点)」などがありました。
また、理科においても問題文は長いものが多いことから、「長い説明文や図・表・グラフに普段から慣れておくこと」も大切です。前提知識がなかったとしても、図・表・グラフを読めば必ず分かるという問題もあります。たとえば、2022年は内容としては、理科的知識がなくても図表を丁寧に読み取れば理解できる思考力が試される問題(「琵琶湖の呼吸」の問題)が出題されました。
きちんと図表を読み取り、論理的に考えられるよう日頃から練習しておきましょう。
社会
社会の問題は、地理分野4問、歴史分野4問、公民分野2問、また、思考力を問う問題4問が出題されました。社会は、小5、小6で習う分野が多く出題されますが、中でも小5(地理)よりも小6(歴史・公民)で習う分野の方がより比重が大きいです。
特に、小5の学習内容であれば地形図、気候・地形・都道府県の位置を問う問題、小6の学習内容であれば明治時代以降の歴史・政治分野などは、毎年頻出の単元となっています。
毎年出題されていない分野もありますが、思考力を問う問題の資料の読み取りに必要となったり、前提知識として必要となることもあるため、網羅的に学習する必要があると言えるでしょう。
2022年の問題の特徴としては、知識を問う問題よりも、記述する・資料を読み取るなど「適性検査らしい問題」が多かったと言えます。たとえば、地図がない状況で都道府県を答える・同時代の出来事をすべて選ぶなど、単純な知識だけではできない問題も見受けられました。
そして、問題文はA3用紙が3枚分。問題数の割には、一つひとつの問題文が長いため、想像以上に時間がかかった生徒も多かったようです。
富田林中の社会の対策としては、重要語句を正確に覚えることはもちろんのこと、「なぜそうなのか」までしっかり意識しながら覚えることがポイントとなります。また、地理は「場所の感覚」を、歴史は「時代の感覚」をしっかりと身につけることも大切です。
また、思考力を用いる問題の比重も大きくなっています。「暗記」だけでは対応できず、普段から問題文をきちんと読み取り、問われていることに正確に答えていく訓練が必要になるでしょう。
〈適性検査Ⅲ〉算数的問題
算数的問題では、大問が4つ。具体的には①各分野の応用問題である独立小問、②条件より整理して解く問題、資料の活用、個数の問題、③身近な事例を用いた文章よりルールを読み取る問題、④与えられた条件より規則性をみつける整数問題です。
2022年においても、単元に偏りはなく幅広く出題されていました。そして、2022年算数の難易度は、昨年よりも易しくなったと言えます。
富田林中の算数のポイントは、限られた検査時間を有効に活用できるかどうかです。同じ大問の中でも解きやすい問題はあるため、確実に点が取れる問題を間違わずに正解できたか、そして一見難解そうに感じる問題でも、会話文などを手掛かりに規則や条件を素早く見つけ、解法に結びつけていけたかがキーとなったのではないでしょうか。
富田林中の算数的問題を解くうえで必要な力としては、まず、「早く・正確に解く計算力」が挙げられます。基本の四則計算に加え、逆算や計算の工夫ができることが求められます。
また、「情報を正しく読み取る力」も大切です。算数においても富田林中は問題文が長いので、条件の多い長文から必要箇所やルールを読み解くこと、図や表などを正しく読み取ること、そして、それらを時間制限内に確実にこなすことが必要です。
最後は、「正確に書き出す力」です。2022年の大問4(数の規則性の問題)をはじめ、図や表を活用しながら、実際に数を書き出してみると、ルールに気付くことも多いです。過年度の問題を解きながら、丁寧に漏れなく書き出し、条件を整理(試行)し、自分で答えを見つけ出す訓練をこなしていきましょう。
作文
作文では、与えられたテーマに沿って自らの体験と考えを綴ります。文字数は360字~440字以内であり、段落数や段落ごとの内容など構成も指定されています。
たとえば、2022年のテーマは「文章を書く」で、記述条件としては「2段落で構成」「1段落目にあなたの体験」「2段落目にその体験をもとにしたあなたの考え」でした。
与えられた条件から「問題文が何を求めているか」「何を、どこに書くべきか」を瞬時に判断し、その要求に応じた形で文章構成を具体的に練ることが求められています。もちろん、段落ごとの要約を的確にしたうえで、相手にわかりやすく伝えなければなりません。
このように、富田林中の作文では「情報処理能力」と「表現力」が必要となります。
6年連続、合格者の半数近くが第一ゼミ生
塾別の合格者数は、第一ゼミナールが富田林中開校以来6年連続No.1となっています。ですが、最初から成績がいい、合格しそうな生徒だけを選抜して指導しているからこの実績というわけではありません。
日々、生徒一人ひとりに寄り添い、一緒に課題を克服していく「生徒第一・1/1(いちぶんのいち)の教育」の丁寧な継続が成績向上、そして志望校合格につながっていると考えています。