2022年、高校の授業に新科目導入。「歴史総合」とは?
中学生の学び

高校の歴史教育が、大きな転換の時期を迎えようとしています。
文部科学省は、2022年を目標に、「歴史総合」という新科目を必修科目として導入すると決定しました。
「歴史総合」は、一言でいうと、これまでの日本史と世界史を融合した科目です。
その授業内容は、どのようなものになるのでしょうか?
また、この新科目を導入した理由や目的とは?
数年後、子どもたちが学ぶことになる「歴史総合」について、ご紹介します。
これまでの高校の「歴史科」とは
高校の授業科目には、「社会科」が存在しないことをご存知ですか?
中学校では「社会科」という科目があり、「地理的分野」「歴史的分野」「公民的分野」の3つに分かれています。
それに対して、高校では「社会科」ではなく、「地理歴史科」と「公民科」の2つが設けられているのです。
「地理歴史科」のうち、「歴史科」は、世界史A、世界史B、日本史A、日本史Bの4つに分類されています。
●世界史A(2単位)近現代を中心とする世界史
●世界史B(4単位)古代から現代までの世界史
●日本史A(2単位)近現代を中心とする日本史
●日本史B(4単位)古代から現代までの日本史
世界史については、世界史Aか世界史Bのいずれか1科目を必修。
日本史については、日本史A、日本史B、地理A、地理Bから1科目を必修。
つまり、世界史は全ての高校生が学びますが、日本史は地理との選択履修なので、学ばない高校生もいるのです。
※参考:文部科学省 高等学校学習指導要領開設 地理歴史編(平成26年1月 一部改定)
2022年、高校の「歴史科」はこうなる
2015年8月5日、文部科学省が発表した新学習指導要領の素案によると、高校の歴史科は次のように変化します。
◇日本史Aと世界史Aを融合した「歴史総合(仮称)」を新設し、必修科目とする
◇世界史は必修ではなくなる(見通し)
日本史Aと世界史Aは、それぞれ近現代史を中心とした内容です。
つまり、2022年からは、すべての高校生が「歴史総合」で「日本と世界の近現代史」を学ぶことになるのです。
「歴史総合」導入に至った理由
今回の学習指導要領改訂で「歴史総合」が導入されることになった背景として、主に2つの要因がありました。
1.近現代史分野の学習不足
2005年に国立教育政策研究所が行った「教育課程実施状況調査」では、日本史Bの近現代史分野(第一次〜第二次世界大戦期)において、生徒の90%近くが標準的な正答率を下回ったという結果に。
以降も、高校生の近現代史の学習不足が継続的に見られました。
従来の歴史の授業は古い時代から順に学ぶ傾向があり、近現代史の内容がおろそかになりやすいことが、原因の1つと考えられます。
2.日本史の必修化を求める声
現行の学習指導要領では、世界史が必修で日本史は選択となっています。
そのため、理系クラスの生徒を中心に、日本史の授業を一度も受けないまま高校を卒業する生徒も少なくありません。
「これからの社会を担う若者が、自分の国の歴史を学ばないままでいいのだろうか……」という考えから、「日本史を高校の必修にしてほしい」という声は以前から上がっていました。
これらの問題を踏まえて生まれようとしているのが、「歴史総合」という必修科目です。
世界史と日本史を融合し、これまで学習不足が目立っていた近現代分野を中心に学ぶことで、上記の問題の改善が期待されます。
グローバル化への対応も
近現代以降の歴史を学ぶためには、世界大戦に代表されるように、国と国のつながりを捉えることが重要です。日本の近現代史はもちろん、現代の国際情勢を学ぶ上でも、諸外国との関係や世界情勢と切り離して考えることはできません。
そのため、従来のように「日本史」と「世界史」を分けて歴史を学ぶのではなく、2つを融合した「歴史総合」という科目が求められたという側面もあるようです。
「歴史総合」を新設することによって、時代認識や国際感覚を磨き、グローバル化した社会で活躍する人材を育成したいという目的もあるのではないでしょうか。
興味を抱き、自分で調べる授業に
「歴史総合」の具体的な内容については、2022年のスタートを目指して現在も検討が続いています。
現時点でわかっているのは、次のような授業になるということ。
◇日本と世界の動きを関連づけて、歴史の流れをつかむ
◇年号を詰め込むのではなく、生徒たちが調べたり議論したりする
以上から予想できることは、暗記に頼った勉強法は通用しなくなるということ。
そして、日本や世界の歴史に興味・関心を抱き、自ら学ぶ姿勢が重要になるということです。
日頃からニュースや新聞で世界の動きに目を向け、親子で話し合ったり、自分で調べる力を身につけたりすることが、「歴史総合」の力を養うことにつながるでしょう。