文部科学省が約4年前に発表した「次世代の学校指導体制強化のためのタスクフォース」の検討結果最終まとめ。これは、学校教育現場の現状を踏まえたうえで、次世代の学校における教員のあり方、学習指導のあり方などの方針をまとめたもので、この内容は今後の学校教育のひとつの指針となっていくことでしょう。
今回は、この「次世代の学校指導体制強化のためのタスクフォース」から、今後の学校教育について考えていきましょう。
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現在の「日本式学校教育」の優れた点とは
日本の学校教育のあり方は、諸外国と大きく異なる部分があります。それは、教職員の子どもへの携わり方です。
諸外国では、教職員の業務は「授業」に特化していますが、日本では、教職員が授業だけでなく、生活指導や部活指導までを一体的に行っています。さらに、通学路での安全確保や夜の巡視指導といった学校外での子どもの活動にまで教職員が対応するケースももはや日常の風景。
このように、日本の学校教育には、子どもたち一人ひとりを総合的に把握しながら指導するという特徴があります。現在の日本型学校教育は、幼いうちに身につけるべき資質や人格、能力を育むための場として学校が発展してきた姿だといえるでしょう。
これからの学校が対応すべき課題も多数
このような日本型学校教育は、実は国際的に評価が高く、海外でも参考にされているほど。しかし、一方で、日本の学校教育現場では、今後取り組まなければならない課題も少なくありません。
子どもを取り巻く課題
例えば、現在、不登校やいじめ、校内暴力、貧困、児童虐待など、子どもを取り巻く課題は複雑化・多様化しています。地域によっては過疎化の進行による児童数の減少、地域の繋がりの希薄化、ひとり親家庭の増加による家庭の孤立化などといった問題も。
いじめや不登校について
学校で発生するいじめ・不登校の件数は年々増加しています。
令和元年度の小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は612,496件でした。平成26年度は188,072件であったことから、この5年間で約42万件もいじめの認知件数が増えたことになります。
また、令和元年度における小・中学校における不登校児童生徒の割合は1.9%であり、5年前の1.2%と比較すると、こちらも確実に増加しているといえるでしょう。
このように、いじめや不登校の件数が増えていることから、いじめが起きる前にいじめの芽を摘み、防ぐことや少しでも早く発見することが求められているのはもちろん、カウンセリングなどの相談体制の構築、急増するインターネットやSNSを利用したいじめなどにも、対策を講じていく必要があります。
また、専門スタッフと学校側とのさらなる連携も求められています。
幼児教育について
昨今、幼児教育についても議論がさかんに行われています。
そして、幼児期の教育は、人格形成の基礎を築く土台になるもので重要であるという認識が広がりつつあります。
一方で、現場としては様々な課題があるのが現状です。
たとえば、幼稚園教育要領等を着実に実施することが求められる一方で、教科書などの教材を用いない「環境を通して行う教育」をおこなう幼児教育ならではの難しさ、それらを実施する教諭の人材育成面での課題などが挙げられます。他にも、小学校教育へのスムーズな連携など、取り組むべき問題は多くあります。
高校生の就学支援について
高校生の就学においては、「学びたい」という意志があるにも関わらず、家庭の経済事情などにより断念せざるを得ないケースがあることが課題の一つです。
質の高い教育を受けたいと希望する高校生は、家庭の経済環境によらず、教育を受けられる社会の実現が期待されています。
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教職員を取り巻く課題
日本型学校教育は優れた点が多い反面、それは現場の教職員の「過度の負担」の上に成り立っているという現実があります。
例えば、始業前や放課後、休日の部活指導や生活指導など、文字どおり「朝から晩まで」「休日返上」で業務に当たっている教職員がたくさんいるのです。また、子どもたちが抱える課題が複雑化・多様化していることも、教職員にとっては頭が痛い問題。
このような教職員の労働環境、労働条件がニュースなどで広く知られるようになり、教員採用倍率は全国的に低下の一途をたどっています。言い換えれば教職員に良い人材を採用できる機会が毎年のように少なくなっているということ。
直近では、埼玉県内の市立小学校教員が「教員の時間外労働に残業代が支払われていないのは違法」だと、県に未払い賃金の支払いを求めた「埼玉県教員超勤訴訟」が注目を集めました。
さいたま地裁は、請求を棄却した一方で「教育現場の勤務環境の改善が図られることを切に望む」と異例の付言をするなど、新たな潮流が生まれる萌芽は見られるようになってきていますが、大きな改善につながるにはまだ時間がかかりそうです。
この状況はまわりまわって子どもたちにとって大きな不利益につながります。できるだけ早期の改善策が求められる課題の1つと言えるでしょう。
時代の進歩にともなう課題
グローバル化や人工知能の飛躍的な進歩によって加速度的に変化する社会に応じた教育も、次世代の学校においては非常に重要です。より広い視野を持ち、予測が難しい社会のなかで生き抜く力をつけるための実践的教育が必要になるといえるでしょう。
このように、次世代の学校教育においては、引き続き解決すべき課題、あらたに取り組むべき課題がたくさんあります。
日本の教育と海外の教育の違いについて
日本と海外の教育を見てみると、そもそものスタイルが大きく異なる部分があります。
「参加型」の授業形式
海外の学校では、授業は基本的に「参加型」で行われており、重視しているのは、自らの意見を伝えること。
小学生であっても、クラスメイトの前に立ち、自分の意見をプレゼンテーションする機会が与えられます。そうして自らの意見を皆の前で伝えることで、プレゼンテーション能力が磨かれるだけでなく、自分に対する自信にもつながります。
一方で、日本の学校では、昨今「アクティブ・ラーニング」を取り入れる動きはあるものの、まだまだ従来からの「受動的」で一方通行の授業が目立ちます。
「得意なこと」を伸ばす教育
海外では、「好きなこと」「得意なこと」を伸ばす教育がなされています。
たとえば、国語が苦手で算数が得意ならば、国語よりも算数をとことん伸ばせばよい、と考えられているのです。
一方で、日本では「得意なこと」よりも、「不得意なこと」に注目される傾向にあります。
得意な科目・分野を伸ばすよりも、不得意なものを少しでも不得意ではない状態にして、底上げをするイメージです。
子供の学習へのモチベーションを考えると、不得意なことに着目されるよりも、得意なことをさらに伸ばす教育の方が良いことは明らかでしょう。
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次世代の学校教育が目指す姿、その実現への構想とは
これら学校教育の「いいところ」と「今後対応すべき課題」をまとめ、指針として示したものが、「次世代の学校指導体制強化のためのタスクフォース」です。
このなかで取り上げられているのは、「今まで以上に子ども一人ひとりと向き合い、個に応じた重点的な学習指導を行う」、「特別な配慮が必要な子ども(不登校や家庭に問題を抱えている、外国人児童など)それぞれの状況に応じて個の能力を最大限に引き出す」「“地域とともにある学校”を目指し、学校と地域が一体となって教育を行う」といった内容。
そして、これらを実現するための構想として、以下の事項が検討されています。
1.学習指導要領改定にともなう「社会に開かれた教育課程」の実現
・小学校高学年で、外国語や理科、体育などの専科指導を行えるよう、専科担当教員や専門性の高い教員の定数を充実させる。
・「主体的・対話的な学び」「より深い学び」の実現のために、アクティブ・ラーニングの指導ができる教員を充実させる。また、少人数指導を実施するための必要な教員定数を確保する。
2.子どもたち一人ひとりの状況に対応した教育
・発達障害、言語障害などの子どもに対して、通常学級に在籍しながら特別指導を受けられるよう、必要な教員を配置する。
・外国人生徒に対して、日本語能力に応じた特別指導が受けられるよう必要な教員を配置する。
・貧困による学力課題が生じている場合に、放課後の学習相談や補充学習、家庭学習サポートなどきめ細かい支援を行う教員を配置する。
・いじめや不登校を未然に防ぎ、早期対応できるよう、組織的な指導体制を構築する。
3.次世代の学校・地域創生プラン
・教員の質を向上させるために、若手教員の多い学校には指導教諭を配置し、校内研修を充実させる。
・学校業務の改善、教育の情報化を推進するために、学校事務職員の体制を強化する。
・教育水準引き上げのため、各自治体が提案する「先導的実践加配制度」を実施し、各自治体が地域の学校教育の実情と、これまで得た現場での経験やさまざまな統計に基づくデータを用いて最適な教育制度や施策を提案する。
このように、学校教育現場の状況を踏まえたうえで、3つの視点から次世代の学校教育に関する構想が練られています。各項目の「教員配置」のキーワードは注目しておくべきポイントでしょう。
学校教育は、時代や社会情勢によって変化していくもの。今回公表された「次世代の学校指導体制強化のためのタスクフォース」によって、学校教育は、これからの時代にマッチした形に最適化されていくのではないでしょうか。ぜひご家庭でも、こういった教育に関する情報にアンテナを張り、これからのお子さまの教育について考えてみてください。
とはいえ、家庭では情報収集やお子さまの学習指導がうまくいかないこともしばしば。そんな時には学校以外の教育のプロの「セカンドオピニオン」を聞いてみましょう。
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