「子どもの性格を直す」ことについて、ご相談を受けることがあります。内向的だったり、落ち着きがなかったりすることを気にされる保護者の方は意外に多いものです。我が子を思う気持ちはとてもよくわかるのですが、実はこのアプローチは効果的ではないかもしれません。
慶應義塾大学文学部教授 安藤寿康氏のお話です。教育心理学を専門とされていて、一卵性双生児研究に尽力されている方です。
http://www.psych.or.jp/interest/ff-07.html
「親の影響や家庭の影響が性格形成に及ぼす影響はほとんどない」というのは、にわかには信じがたいかもしれません。あくまで性格に限った話ですから、当然ながら、自己肯定感(自分の価値や存在意義を肯定できる感情)や自己効力感(自分に対する信頼感や有能感)などは、教育の影響を受けます。だから、教育しなくていいという結論にはなりません。
いまの学力がわかる!伸びしろも見える!
【小・中学生 全学年無料】第一ゼミ公開テスト!
しかし、子どもたち一人ひとりが持つ性格について、遺伝的な影響を無視できないのも事実。であれば、性格を変えようとするアプローチは本当に効果的なのでしょうか?
そもそも、性格を直そうというアプローチ自体に大きなデメリットがあります。最も大きなデメリットは、直そうという発想は「あなたは今のままではダメだ」というメッセージそのものになるからです。
遺伝的な影響を受けるものとして典型的なものが身長です。性格を直せというのは「あなたの背が低いのがダメだから直せ」と近いものになります。「あなたはそのままではダメだ」というメッセージを受けることが子どもたちにとって、良い影響があるとはとても思えません。
あまり効果が期待できないばかりか、マイナスの作用が起り得る方法を子どもたちにわざわざ与える必要はないのではないでしょうか。
ですが、子どもたちの性格特性を理解した上で、行動を変えることは可能です。神経質な性格の持ち主は、新しいことや未知の物との接触を避けがちです。しかも、一説によると、神経質な性格の持ち主が抱く「リスク」の90%は、実際に起きないという研究結果もあります。
ほとんどが取り越し苦労なのです。それでも、不安を抱くという心理的な反応は、ある程度持って生まれたものと理解すれば、「事前の準備でどれくらい不安を減らせるか」に取り組めばいいのです。
また、神経質な性格を自覚すればするほど、また自分が抱く「リスク」が実際に起きないことを何度も経験することで、「不安は感じるけれども、今回もまたこれは起きないのだろう。ただ、起きた時の対策として準備をしておこう」といった捉え方ができるようになれば、行動は変わってきます。
神経質な性格はそのままに行動だけ変えることが可能なのです。性格を直そうとするよりも、子どもたちが自分の特徴を理解し、活かす方法をともに探してあげるのが、親にできることではないでしょうか。