大切な試験や受験前になると、つい夜遅くまで勉強をしてしまいがち。でも、これは脳機能の観点から考えるとあまり良いとはいえません。
なぜなら、記憶の強化には睡眠が欠かせないから。十分な睡眠を確保することが、学習を効率的かつ有効なものにしてくれるのです。もし、お子さんが睡眠時間を削って夜遅くまで勉強をしているのであれば、保護者のみなさんとしてはその習慣を見直させたいものです。
そこで今回は、学習の効率化にとって睡眠が大切な理由を脳機能の観点から解説するとともに、上手な睡眠の取り方についてご紹介します。
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睡眠の基本的なメカニズム
まずは、睡眠のメカニズムについて知っておきましょう。
睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠という2つの要素から構成されており、これらは1晩に4~5回、約90分周期で繰り返されています。
ノンレム睡眠
ノンレム睡眠とは、脳が休んでいる状態のこと。簡単にいえば「ぐっすり眠っている状態」で、このときには多少の物音や刺激で目覚めることはありません。
脳が休止状態にあるノンレム睡眠中の人を強制的に起こした場合、活動を開始できるようになるまでにはしばらく時間がかかります。なお、ノンレム睡眠は眠りの深さによって4段階に分類されます。
レム睡眠
レム睡眠とは、身体は眠っているものの脳は覚醒している状態のこと。
レム睡眠はRapid Eye Movement(急速眼球運動)の略であり、この状態にあるときには瞼の裏側で眼球が左右にキョロキョロ動き、脳は活発に活動しています。夢を見るのも、この状態のとき。
ノンレム睡眠とレム睡眠のサイクル
睡眠時には、ノンレム睡眠とレム睡眠が1セットとなったサイクルが約90分周期で繰り返されています。
ノンレム睡眠の第1段階:寝床に入り、うとうとした状態
↓
ノンレム睡眠の第2段階:本格的な睡眠に入り始める状態
↓
ノンレム睡眠の第3段階:深い眠りに入っている状態
↓
ノンレム睡眠の第4段階:最も深い睡眠状態
↓
レム睡眠:睡眠サイクル最後の段階、脳は覚醒状態
たとえば、7時間半の睡眠をとった場合には、このサイクルが5回程度繰り返されることになります。
「朝すっきり目覚めるためには90分の倍数の時間で起きるのが良い」というのを聞いたことはありませんか。このようにいわれているのには、「脳が覚醒している状態のレム睡眠時に起床すると、すっきり起きられるから」という理由があるのです。
記憶の強化にはレム睡眠が必要!
先述した二種類の睡眠のうち、記憶の強化にとって有効なのはレム睡眠のほう。レム睡眠時には、夢を見ることで記憶が整理され補強されています。
かつて、フロイト流の精神分析が流行った時代には、「夢は潜在意識の現れである」という見方がされていました。現在でも、こういった考え方に基づき、夢占いや心理療法が行われることもあります。
一方で、近年の脳科学では、「夢とは、記憶や情報の整理・補強機能である」という見解が常識となっています。つまり、わたしたちは、睡眠中に混沌とした記憶や情報を整理・補強しているのです。
中には「夢をあまり見ない」という人もいますが、覚えていないだけで誰もが睡眠中に多くの夢を見ています。わたしたちが知らないうちに、脳内では記憶の強化活動が行われているのです。
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学習効率アップには7時間半、できれば9時間の睡眠を。
ノンレム睡眠とレム睡眠のサイクルは約90分周期で繰り返されていますので、レム睡眠を多くとるためには90分の倍数で睡眠をとることがポイントとなります。
また、睡眠時間が長くなるにつれてレム睡眠の時間が長くなるということもわかっています。7時間半、可能であれば9時間の睡眠をとるように心がけましょう。
なお、睡眠の記憶強化機能をさらに活かすためには、勉強が終わったらすぐに寝るというのが効果的です。
なぜなら、脳には最も新しい記憶を優先的に定着させるという性質があるから。お子さんには、勉強が終わったらテレビを観たりゲームをしたりせずにすぐに眠るよう指導しましょう。
効率的かつ有効な学習を行うための上手な睡眠の取り方を、ぜひお子さんにも教えてあげてくださいね。